自殺予防と自死遺族支援・調査研究研修センター:Center for Suicide Prevention and Survivor Support

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危機のときだからこそ、一人一人の尊厳を大切にしたい
~新型コロナウイルスに追い込まれない社会へ

新型コロナウイルス感染拡大によって4月7日に発せられた緊急事態宣言も解除され、感染予防のための新しい生活様式を取り入れた日常が戻りつつあります。この間、医療の現場で戦ってきた方々、市民の生活維持のために働いてくださってきた方々に感謝します。
経済活動も再開しつつありますが、社会への影響はこれまでにないほど大きく、苦境に陥った人が増えています。そして、これからの未来を背負う若者達も苦境の中で必死に戦っています。このような状況だからこそ、苦境に陥った人が、仲間や支援者と出会い、新たな連帯をつくる工夫が求められます。
しかしながら、メディアの報道には、史上最悪の伝染病というイメージを植え付け、人々の不安や恐怖をあおるものも少なくありません。感染力が強く、遺族はお骨を拾うことさえできないという報道に恐怖を感じている人もいるのです。それが「自粛警察」と呼ばれる活動や差別的言動につながっていると感じます。自死にまつわる報道や情報に関しても、気がかりなものが散見されます。こうした状況では、人々は、経済的にも社会的にも、個に分断され、追い込まれていくでしょう。孤立した人には、支援の手も届きにくくなります。メディアには、一人ひとりの声をていねいに聞き取り、新たな連帯に向かえるメッセージを発することを意識してほしいと思います。
また、支援の提供が単なる押し付けや強制となってしまっては、かえって孤立する人を増やし、社会の分断を招くことになりかねません。支援を必要としている人を「弱者」や「貧困」と一まとめにして扱うことも、人間の尊厳を傷つけ、相談窓口から足を遠ざけさせることになります。日本国憲法13条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とあります。支援の根底には、この意識と認識が必要です。すなわち、どんなに厳しい状況にある人も、弱者として哀れまれたり、一方的に支援される存在に貶められたりしてはなりません。人間の尊厳を認められ、人として尊重されなければならないのです。
自死の問題に深く関わってきた組織や団体は、緊急事態宣言中も「3密」を避けながら、工夫して、制度利用の手続き支援などの相談会を開催してきました。自殺対策基本法ができて15年、活動の中で蓄積されたノウハウが役立ったのです。
一方で、支援方法の選択や説明に配慮を欠いて相談してくださった方の心情を傷つけてしまうような事例、支援のアナウンスの方法に配慮を欠き、かえって自死を誘発してしまうのではないかと懸念される事例も見受けられます。すべての団体、支援者において、改善すべき課題と考えています。
私たち「自殺予防と自死遺族支援・調査研究研修センター」(CSPSS)は、全国各地で活動をしている仲間が、これまでと同じように支え合い、支援を続けていけるように、多様な組織団体と連携し、力を尽くしていきます。
危機のときだからこそ、これまで以上に、苦境に陥った人の声を聞き、支援の隙間からこぼれ落ちそうな人たちに声をかけ、希望をもってもらえるような活動を丁寧に続けていきます。
ひとつでも多くのいのちが、未来を開いていけるように。
喪われたいのちが生かされるようにと願って。

一般社団法人 自殺予防と自死遺族支援・調査研究研修センター
理事長 田中幸子
(一般社団法人 全国自死遺族連絡会代表理事)
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